空間デザインの仕事はグラフィックデザインと比べて分業しやすいのが特徴です。
以前書いた記事の通り、3DCGデザイナーがまさにそれに当たりますが、図面を描く業務も分業しやすい仕事のうちの一つです。
昔は手書き図面が主流だっために、分業しにくい仕事だったのですがCAD(computer-aided design)の誕生によって分業できる仕事として需要が伸びました。
いわゆるCADオペレーターという仕事になるのですが、今回はこのCADオペレーターという仕事にフォーカスしていきたいと思います。
・クリエイティブ業界歴28年目
・クリエイティブ会社経営(社長雇用1社、役員雇用3社)経験あり
・その後、クリエイティブ会社を自ら起業し現在に至る
僕の会社での空間デザインの仕事はいわゆるデザインと基本設計(詳細・実施設計に入る前の概略設計)までとすることが多いです。
そのためあまりCADオペレーターに分業することは少ないのですが、それでも監修的な立場で結果的にCADオペレーターの方と会話することは多く、その仕事事情に関してもそれなりに知ることができました。
CADオペレーターの需要は高い?将来を見据えればよりgood!
CADとはcomputer-aided designの略称で日本語的にはコンピューター支援設計ツールという意味になります。つまりは人の手で行われていた設計をコンピューターを使って支援するという意味合いですね。
これは25年ほど前までは図面は手書きで描かれていたことが主流だったことに由来しますが今では手書きで図面が作成されることはほぼなく、パソコン上での図面作成が主流のため、CADと言えばパソコンの設計図面作成ソフトを指す言葉で定着しています。
そしてCADオペレーターとはまさにCADを扱って図面を制作する人のことです。
CADオペレーターの需要は過去に一度ピークを迎えていますが、その時がまさに手書き図面からCADが主流になろうとしていた過渡期なので、今から20年ほど昔になりますね。
その頃、図面は一気にデジタル化が進み、CADスキルを身に付けることが出来なかった昔ながらの設計事務所はずいぶん淘汰されたのではないでしょうか。
何せCAD図面は手書き図面と違い「データ管理ができる」、「データをシェアできる」、「変更修正が容易」、「3DCGパースへの移行も可能」という良いことずくめ。今では当たり前のことですが、当時はずいぶん画期的なことだったのですね。
ちなみに僕はそのCAD移行の過渡期を20代後半くらいに勤めていたデザイン会社で経験しました。
当時は一気に設計図面データ化の動きがあり、大手などこぞって既存の図面もデータ管理しようという動きになり、CADオペレーターの需要は一気に膨らんだでいったことを覚えています。
それでは現在のCADオペレーターに対しての需要はどうでしょうか?
今はそのような時代とは全く異なり、CADで図面作成は設計業界では当たり前であるため、需要は少ないように思われがちですが、実は慢性的な人材不足に悩まされているのが現状です。
その最大の理由としてあげられるのが多くの設計士を抱える大手ゼネコンなどが中心の建設業界の若者離れです。実際に建築士、特に一級建築士の受験者数は年々減ってきており、ここ20年間で半分以下になってしまい、結果として一級建築士の6割が50代以上という高齢化も進んでしまいました。
その理由としては大きく以下のことが挙げられます。
・建築士試験が難しすぎる
建設業界は大きなお金が動くこともあり政治献金や談合などでニュースになることも多く、クリエイティブな仕事であるにもかかわらずイメージが良くないです。
また建設業界と関わりの深い設計士も構造計算書偽装問題などで若者が憧れるようなイメージを持ちにくい業種に変わってしまいました。
特に建築現場は事故などの危険もあり現場監督や職人になりたい若者は激減しています。
その上、建築士の試験は国家資格ということもあり難易度はかなり高く、合格するのは容易ではありません。また、建築学歴のない人は受験資格を得るためだけに7年の実務経験が必要など、ハードルは高さは国家試験の中でも随一です。同じ国家試験を受けるなら花形職業とも言える医者や弁護士になりたい、と考える人が多いのも仕方のないことかもしれません。
建築士になろうという若者が減れば、図面を作成する技術であるCADを取得する若者も減りますし、CADオペレーター自体が人材不足になってしまうことも当然と言えば当然ですね。
そんな建設業界の設計分野においてCADオペレーターの需要はもちろんありますが、全体的な人材不足でもあるため、せっかく人材を採用する企業から見れば、CADオペレーターとしてだけで終わらせたくないというのが本音でしょう。
つまり、CADオペレーターの仕事においては、単なる図面入力作業だけに終わらず、組織内でよりステップアップを目指してくれる人材が好まれるということですね。
そんな業界の中で需要が高いのは以下の二通りのCADオペレーターということになります。
・CADオペレーター技術が高く設計知識も高い人材
逆を返せば、人材が不足している業界だからこそ狙い目であるとも考えられますので、腰を据えて働けば重宝されると考えられます。
その過程でCADをじっくり学ぶ機会も得られるので一石二鳥とも言えますね。
業種別で選びたい!CADの種類と価格
CADの技術を身につけることで建設業界や設計業界での需要は高くなりますし、会社によっては未経験からの新人を募集しているところもあります。
ただ、そういった需要のある会社で働く場合でも事前にCADの技術が少しでも学べていれば採用条件が良くなることもあります。
ここではCADオペレーターの需要の多い業態と、そこで求めれるCADの種類について押さえておきましょう。
建設業界(土木関係の会社やゼネコン系)など
建築図面作成に特化しているAuto CAD(オートキャド)はゼネコンの設計チームや土木関係で多く採用されていますので、ゼネコンでCADオペレーターの仕事を考えている方にはおすすめのCADです。また募集している求人数でもAuto CADは一番多いため汎用性の高いCADソフトと言えますね。
建築業界以外だと機械系の部品の詳細図を作成する場合に使用したり、自動車の部品の詳細図を作成するメーカーなどでも採用されています。
料金:サブスクリプション方式、1ヶ月26,400円(税込)、1年間209,000円(税込)、3年間564,300円(税込)
デザイン事務所、設計事務所、アトリエ、内装業者など
クリエイティブ性の高い空間デザインの提案を行ったり、インテリアや家具、展示会ブースなどを手掛ける企業などで多く採用されているCADがVectorworks(ベクターワークス)です。グラフィックデータなども取り込みやすく、簡単に3Dに立ち上げてモデリングすることもできるため、プレゼンテーション向きの CADとも言えますね。
クリエイティブ系の空間設計会社でCADオペレーターをやりたいと考えている人にはおすすめです。
料金:買取方式、スタンドアロン版(1ライセンス)、305,000円(税別)
フリーランス、住宅系工務店など
無料でCADを使用したい人におすすめなのがJw_cad(ジェイダブリューキャド)です。建築に特化したフリーソフトで、お金がかからないのが特徴です。
無料とは思えないほどの汎用性と機能性を兼ね備えているため、住宅や小規模の店舗などを手掛けている工務店や住宅リフォームの企業でも多く採用されています。起業したばかりの人や初期コストを抑えたいフリーランスの人にも人気があります。
料金:無料
Auto CADやVectorworkは高額なため、個人で購入する前に今後、自分がどんな仕事をしたいか、どんな会社で働きたいかによって、よく検討してみると良いでしょう。
もちろん最初は無料のJw_cadを使用してみるのも良いと思います。
予め働きたいと思っている会社に問い合わせてみるのも一つの方法ですね。
CADオペレーターになるために最短でスキルを身につけよう!
CADオペレーターになるためにをCADスキルを身につけたい場合はスクールを受講するのが一番の近道です。
特にCADオペレーターの仕事をする場合、単純なCAD技術だけでなく、図面を読んだり建築用語や法規など基本として知っておくべき知識もたくさんあるからです。
そういった基礎知識も学べるスクールに行くことで独学よりも早く CADオペレーターになるために必要なスキルは身につけられるでしょう。
ヒューマンアカデミー・CADオペレーター養成講座
Auto CADの基本となるコマンド操作から実践的な図面作成までを学習し、建築・インテリア・機械・プロダクト・設備・土木など、あらゆる設計分野で活躍できるCADスキルを習得。クラス担任制でCADに初めて触れる方にも安心です。
http://haa.athuman.com/kouza_C/detail/?kid=32156
アビバ・ CADコース
AutoCADとjw_cadのコースを選んで受講することができます。
実務において使用頻度の高い機能を厳選し、わかりやすい映像解説で学べるため、CADの初学者にも学習を続けて頂ける内容となっています。
https://www.aviva.co.jp/avivapro_cad/
最後まで読んでいただきありがとうございました!
「CADオペレーターの需要は高い? CADの種類と効果的なスクールを紹介」いかがでしたでしょうか。
クリエイティブ関係の仕事で役に立ちそうな情報があれば今後も発信していきますので是非ご覧下さい。